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2006年5月 8日 (月)

青空の卵

ミステリは本格こそが王道、とは思いつつ、そうそう殺人事件などばかり起こるのは不可解ナリ、とも思う自分としては、所謂「日常の謎」系本格ミステリこそが似つかわしいのだろう。というわけで、本書もかなり楽しむことができた。けれど、どこか釈然としない気分であった事もまた告白しておかずばなるまい。

ひとつは、すごくまっとうであるところに欺瞞を感じたせい。例えば、語られる物語が度を越したウェルメイドな人情話であるところとか、登場人物たちが次々と友人関係の輪を広げていくところとか、そういうシンプルでお手軽なもんじゃないだろう? と思ってしまう。まあ、なんのことはない自分に置き換えた場合、そんなに容易く人を受け入れたり信じたりすることができないってだけの話なのだ。人見知りが激しい自分としては架空の物語に嫉妬しているのだな。

もうひとつは、主人公ふたりのいびつな人間関係にすごいネガティブな雰囲気を感じてしまったことや、30近くにもなってすぐ泣くシーンに鼻白んでしまったことにある。これも要するに自分には「それはできない」という矜持(?)との違和感に勝手に反応してしまっただけのことだと判ってはいる。

結局、なんか自分のダメな部分を見せつけられている気がして尻の据わりが悪かったというだけの話だ。我ながらひねくれているなぁ。

そんな違和感はしかし作品をスポイルするような理由ではない。冒頭に書いたとおり、好きな系列のミステリであり(かなり若書きだけどね)、続きが気になるくらいに気に入った。完結したシリーズだし、とっとと文庫化していってほしいところだ(ハードカバーで買わないのはよい読者ではないか(笑))。

青空の卵 Book 青空の卵

著者:坂木 司
販売元:東京創元社
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コメント

いろいろと、嘘臭かったり大仰だったりするところがあるとは、私も思うよ。表現的に、ちょっと、と思う所もあるし。
好き嫌いは、そういう所に引っかかるか、スルーできるかによるのかも。

>結局、なんか自分のダメな部分を見せつけられている気がして尻の据わりが悪かった

あー、なんかライトノベル的(あるいは、まっとうなブンガク的)読み方しているように見える。
そういう色分けするのは是非もあるだろうけど、私なんかは、読むポイントはそこじゃない、と思って読んでいるのでそうは思わないな。

投稿: cherryh | 2006年5月 8日 (月) 21時43分

いや、基本的には真っ当な「日常の謎」として楽しんだんですよ。

ただ、自分が人見知りが激しくてああやってどんどん人の輪をつくっていけないからこそ、そういう生き方に嫉妬しちゃってるってだけの話ですねー。

投稿: 管理官 | 2006年5月 9日 (火) 12時53分

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