動物園にできること
動物園や水族館は、単純に「楽しくて好きな」施設であり、以前ほどではないものの行く機会は多い。自分が生物学を学ぶ者でもあったこともあり、また、仕事上(でもないか)飼育キュレーターの知り合いもおり、動物園に対する意識はそれなりに高いほうだと思っている。それは、動物を狭い檻に閉じ込めていることに対する意味であったり、来園者を楽しませるためのメソッドのありかたであったり、なにより、動物園という施設の存在意義について、であったりするわけだが、そのような課題認識に対する明快な答えは、自分は持ち得なかったし、動物園から得ることもなかった。
そんな中で、アメリカの例ではあるが、動物園の存在意義はなにか? その時代推移はどうなっているのか? など、ひとつの答えが書かれており、本書を読むことが実にエキサイティングな体験であった。
特に、施設が本質的に担うべき教育普及機能に対する取り組みの変化、深化については、現在自分が抱えている課題でもあり、身につまされつつ新たな活力を得た感がある。
そこに書かれた内容は、作者も折りにつけ書いているとおり、アメリカ大国主義的な傲慢さもあり、もろ手を上げて、賛成し感銘を受けるというようなものではない。であるが故に、批判的な感情なども含みつつ、失敗例や成功例を常に自分で咀嚼し、思考しながら読んだため、かなり時間がかかってしまったが、その文、非常に濃密な体験となったと思う。
今後、動物園に行ったときの自分のものみかたや捉え方は、確実にこれまでと違っているだろう。
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動物園にできること 著者:川端 裕人 |
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