単行本が出たときに非常に気にはなっていたのだが、逡巡しているうちにマンガ化して今度はドラマ化。直感を信じられなかった自分が許せないな。ちくしょ、すんごい面白かった! 全編を通じて感じるのはストレスフリーな物語であるということ。自意識過剰な物語ばかりな昨今(とゆーか自分が読む話はそんなんばっかってことだが)、屈託していない物語は実に潔い。清々しい。
とにかくフーゾク専門高校という強烈な飛び道具的設定(ネタ)が実にキャッチーなのだった。そしてそんな一歩間違えると単なるエロマンガ的なネタになってしまうところを、心地よい学園青春小説にしあげてくる腕に拍手する。作者は生々しいエロネタに陥らないための作話の仕掛けには、すごく気を配っているように感じた。
例えば、クロニクル的回想で物語を進めることによって、登場人物の具体的なエロ行為の表現を必要としないエピソードを重ねてくるところや、さすがにそれはヤバイっしょというような常識的モラルからの逸脱で読者をドン引きさせないよう、小田真理というキャラクターを配置して安全弁としているところなど、語り口に非常に気を使っている。また「セックス」というリアルな単語自体も、生徒とは無縁の、しかも最後のほうになってはじめて登場させている。
青少年の乱れた性をオッサンくさい目線で描くような真似はしていないのである。あくまでもこの物語が艶笑譚であり寓話であるというスタンスを崩さない。見事である。そんな特異な高校の10年の断片記録ではるが、それでもキャラのたてかたがしっかりしているので、ラストの全員揃っての大団円はかなりホロリとさせられるのであった。
さて。ところが、野球部に関しては他のエピソードに比べると非常にページを割いている。つまり異常な設定でも、部員達の行動は(陳腐な表現でスマンが)普通に素敵な青春群像劇であり、そこに描かれるのは、設定の(いい意味での)おバカっぷりとは裏腹に、至極直球に凄いヤツラの物語になっている。話はちょっとずれるが、高校野球の胡散臭さは自分も常日頃感じていることで、高野連の老害的愚劣さを一刀両断する様は実に心地よい。正直、ちょっと泣けたよ。
そんな設定の勝利な物語ではあるが、しかしこれは活字であるがためのフィルターというものは確かにあるのではないか、とも思う。マンガやドラマにした場合、そんなオブラートがない分、生々しさが先行してしまわないのだろうか、とは気になるところではある。ビジュアル化されると自ずと生々しさというか、即物的なエロが前面に出てしまって、せっかくの話の面白さとは別のテイストになってしまうような気がするのだか。実際、マンガに関してはちょっとだけ読んでみたのだがその傾向を感じてしまったので、なんか違うな、と。
ともあれ、お買い得の1冊だとは思う。
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