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2006年3月31日 (金)

星の王子さま

実ははじめて読んだのだが、うーん。確かに面白いのだが、時代を超えた名著か、といわれるとちょっと云いすぎなんじゃないの? と思ってしまった(この話を好きな人には悪いとは思うけれど)。
多分それは、世間一般での諸手をあげての永続的なポジティブキャンペーンのせいで、ひねくれた読みかたをしてしまったのかもしれない。もっと冷静な気持ちで読んでいれば感想もまた変わったと思うんだけど、ホントに本との出合いってタイミング的なところってあるからねぇ。

さて、自分が読み取った本作とは、全編に啓示にあふれるアフォリズム文学であると。人生に対する示唆に満ちた寓話であると、そう思った。面白いとは思ったんですよ。ただ、ひねくれてみると、イタイ系キャラの「王子さま」に翻弄される主人公(話者)の物語なんだなぁ。特に前半部。まあ、ピュアとイタイは表裏一体だからね。

一気に読むのではなく、一章ずつかみしめながら読むべき話だと思いました。

星の王子さま Book 星の王子さま

著者:河野 万里子,サン=テグジュペリ
販売元:新潮社
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2006年3月28日 (火)

ローカルヒーロー大図鑑

戦隊モノってどこか少年ゴコロ(オタクゴコロ?)をくすぐるものがあるのだろう。ローカルヒーローが絶えないのもそのせいだろう。単純に、パラパラめくっているだけでも面白いのだが、一時期、戦隊モノの分析を計画していた(というか現在も検討中断中)自分としては、参考文献としても実に嬉しい。

個人的な萌えシロヒーローは、ネーミングにはまった路面ライダー@愛媛。キュートな絵づらのパンダレンジャー@大阪。そのアンチテーゼ(?)のダークさ加減がいいオレパンダー@愛知。いやぁ、ヒーローっていいなぁ。ちゅーか、自分の気持ちのどこかになってみたいというあこがれの気持ちがあるんだろうなぁ。

あ! ホワイトストーンズがしっかり掲載されているのにホロリとしたことは云うまでもないです!

ローカルヒーロー大図鑑 Book ローカルヒーロー大図鑑

著者:ブルーオレンジスタジアム
販売元:水曜社
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お月様のためいき

元々、レディース雑誌が掲載元なのでそーゆーもんなのかもしれないが、ライトノベルのレーベルで発刊していいんでしょうか? と思うくらいセックス行為を堂々と書き込んでおられる。まあ、それ専門の小説からすればソフトなんだろうけれど、ちょっとねぇ。と思うのは、自分が歳とった証拠なのだろうか?

とはいうものの、話自体はキライじゃあないのだ。一人称で描かれる恋愛の悶々(といっても下半身方面のそれではなく、相手の気持ちが判らないよ~的な精神的な)としたアレコレが、けっこう判るなぁって感じで面白かった。文調も元々がライトノベルじゃあないので、チャカついていないしね。

てなわけで、書下ろしの冒頭章と最終章は、かなりツボにハマリました。この作者には、もっとごくフツーの(メグライアン主演、ノーラエフロン監督みたいなタイプの)恋愛コメディを描いてみてほしいなぁ。

ところで、実際のプレイの段取りですが、自分的には。。。 コメントは控えます。

お月様のためいき Book お月様のためいき

著者:かめの あゆみ
販売元:竹書房
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2006年3月27日 (月)

トリツカレ男

不覚! 泣いてしまった、電車の中で。

小さな小さな物語である。器用なくせに不器用な二人の愛の物語である。ほんの小さなエピソードが積み重なって結びつき合って、ひとつの(小さいくせに)大きな大団円となる。生きていくって、大変だけどステキなことなんだな、と本当にそう思えたんだ。
だから、通勤途中の電車の中で泣いてしまったことは、まあ恥ずかしかったけれども、嫌な気分ではなかったよ。

いまさら自分が云っても「遅いよ」なんだろうけれど、とにかく一読することをお薦めする。

Book トリツカレ男

著者:いしい しんじ
販売元:新潮社
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新世紀エヴァンゲリオン(10)

その当時は、それはもう思いきりハマってしまって、憑物を落とすのに何年もかかってしまった。しかし10年もたてば一時期の熱狂からは醒めて、それなりに客観的に読むことができる。で、感想としてはやはり面白いもんは面白い。自分の場合、話(設定やガジェットも含めて)の引力もさることながら、やはり貞本義行の絵ヂカラに対する惹かれゴコロが強いなぁ。

そんなわけでコミックス版については貞本満載なお得感で非常に嬉しいのだが、いかんせん発刊間隔が長すぎて前巻の展開をおさらいしなきゃならんのは、キビしかとです。全巻出揃ったら通して読み返して、またハマってみるもの一興ですかね(何年後になるんだろうか・・・)

新世紀エヴァンゲリオン (10) Book 新世紀エヴァンゲリオン (10)

著者:貞本 義行,GAINAX
販売元:角川書店
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2006年3月26日 (日)

キミを救う最初の呪文

読んでいてなんか釈然としないというか、これでいいのか?という疑問が飛び交うというか。。。 作品の出来不出来以前の問題として、自分は、こういう男に都合のいい話、なんのとりえもない男子に何故か献身的な女子が集まってくるという展開の話が、ものごっつうキライなのですだ。それって、男も女もバカにしてるでしょ?

この主人公、人間失格(太宰の)だよね? なんの才もないダメな人間で、そんなダメっぷりが逆に女子の気持ちを惹きつけてしまう、そういうヒモ的設定。そんな主人公の男子に感情移入がまったくできんのです。そしてそういう設定を是とする世間の状況に悲しくなるとです。

コメディと描いてあるがこれはコメディではないでしょう。お約束で展開する深みのないストーリー構成で、笑えない。

まあ、巨乳でロリ顔のトラブルメーカーというヒロインには惹かれる(正直今回は表紙買いでした)が、だからといってそれが免罪符ではないよね。結局のところ、自分とは彼岸の小説なんだなぁ、とつくづく感じたのだった。

魔法の呪文のバカバカしすぎるアホなセンスはけっこう好きなんだけどね。そのセンスをストーリーとしてナンセンスギャグ満載のちょいエロドタバタコメディとして昇華してくれればよかったのになぁ。

キミを救う最初の呪文 Book キミを救う最初の呪文

著者:須堂 項
販売元:メディアファクトリー
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ろくろ首の首はなぜ伸びるのか 遊ぶ生物学への招待

作者自身「鼻行類」にインスパイアされていると書いているとおり、正統派の嘘学本。妖怪が生物として成立するための考察のあれこれについては、実際ワクワクさせられた。
本来ありえない事象が成立するための思考実験は、まさに「空想科学する者」としての基本的な心構えであろう。現代科学では成り立たないことを笑いにするため重箱の隅をつつくようなあらさがしをする某空想科学解説書の志の低さに比べ、数段「科学の楽しさ」を理解し表現しているといってよいだろう。

といいつつ、(作者があとがきでエクスキューズもしているが)完全な嘘に徹しきれなかった部分はちょっと勿体なかったかもしれない。また、それぞれの章でもワンアイディアを提示するにとどまっており、そこからさらに深い考察にまでふみこみきれていないところについては正直残念なのだが、とりあえず数で勝負といったところなのかもしれない。

生物学をかじったことのある人はもちろん、そうではない人にもお薦めしたい。

ところで、一生物嘘学者としては、鵺は、交合状態のまま癒着してしまったアンコウのような雌雄共生体だと仮説したい。また目々連は障子環境に寄生するガラス体植物であると仮設したい。しかしそれはまた別の機会に論証してみることとしよう。

ろくろ首の首はなぜ伸びるのか 遊ぶ生物学への招待 Book ろくろ首の首はなぜ伸びるのか 遊ぶ生物学への招待

著者:武村 政春
販売元:新潮社
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2006年3月25日 (土)

魔法使いのたまごたち(1)

魔法から科学へと変化しつつある時代の魔法使いの物語。そして寮生活の魔法学校の物語。という、ステレオタイプ、とまではいわないまでも先行作品はそれなりにある設定だが、手堅くまとまっている。萌えシロも用意されており、悪くはない。
(と、いいつつハリポタは相当意識していて縮小再生産部分が散見されるのは、ちょっと引くかな)
ま、第1巻は登場人物紹介的色合いが強く、話がなかなか転がっていかないのだが、今後どう展開していくのか期待はしている。

しかし、作画石川マサキはもっと描けるはずなのにちょっと描きとばしてるかなぁ。もちろん気合は入っていると感じはするのだけれど、ひぢり名義での濃密な筆使いとは違うから。やはりあれはエロパワーのなせる技なんすかね? いや、別にそういう展開や絵づらを期待しているわけではもちろんないのだけれど。

魔法使いのたまごたち 1 (1) Book 魔法使いのたまごたち 1 (1)

著者:雑破 業
販売元:講談社
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2006年3月23日 (木)

通勤電車で座る技術!

瑣末なテーマを仰々しく論じるタイプのハウツー本。書かれている内容は、誰でも車中では考え、あるいは実践している事柄ではあるが、あらためてまとまった形で提示されると、「あるある」的視点と「目鱗」的視点が相まってけっこう楽しめる。

肩のこらないお手軽な本なので文体もお気軽だが、たまに挿入される数式や図示がそこはかとない学問っぽさを匂わせていて、個人的にはそっちの路線で(電車だけに!)まとめてほしかったかな、とは思う。

それにしても、流星課長はいつみてもカッコイイなぁ。

通勤電車で座る技術! Book 通勤電車で座る技術!

著者:万 大
販売元:かんき出版
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鼻ほじり論序説

鼻をほじることに対する、歴史から技術など様々な視点から考察した研究書。

くだらないことを大上段に構えて論旨を展開する部分、研究書の姿勢を崩さない構成など、まさに嘘学。ただし、せっかく前半部分で、(固有名詞などで「ああ、これはウソなんだな」と判る程度で)いかにも格調高い論文然としているにもかかわらず、中盤以降、書くべき内容(つくべきウソか?)がなくなってしまったのかどうか判らないが、星座占いやテーマソングなど内容的に急激に失速してしまっているのが非常に残念ではある。

ところで、惹句に「セックスよりも愉しく、しかもリスクなし!」とあるが、さすがにそれは賛成しかねるなぁ、いろんな意味において。

鼻ほじり論序説 Book 鼻ほじり論序説

著者:ローランド・フリケット
販売元:バジリコ
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2006年3月21日 (火)

スミレ・17歳!!(1)

くっだらねぇ~!(誉め言葉) 女子校生の腹話術人形スミレの胸キュンストーリーに腰が抜けましたともさ。

話としてはごく普通のお約束な展開の高校青春コメディだが、主人公が人形であるというだけでここまでスットコドッコイな感じになるわけだ。冷静になれば、ストーリー展開が一様で先が読めてしまうとか、絵柄がモロにマガジン系(ヤンキー入った雑な絵)で萌えシロが不足してるとか、裏方のオヤジが意外と前に出てきて覚悟に欠けるとか、まあ、アラを探せばキリがないのだが、気軽に脱力できるというのは、まあ悪かないかな(もっとも次巻も買うかどうかはまた別の話だ)。

スミレ・17歳!! 1 (1) Book スミレ・17歳!! 1 (1)

著者:永吉 たける
販売元:講談社
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動物園にできること

動物園や水族館は、単純に「楽しくて好きな」施設であり、以前ほどではないものの行く機会は多い。自分が生物学を学ぶ者でもあったこともあり、また、仕事上(でもないか)飼育キュレーターの知り合いもおり、動物園に対する意識はそれなりに高いほうだと思っている。それは、動物を狭い檻に閉じ込めていることに対する意味であったり、来園者を楽しませるためのメソッドのありかたであったり、なにより、動物園という施設の存在意義について、であったりするわけだが、そのような課題認識に対する明快な答えは、自分は持ち得なかったし、動物園から得ることもなかった。
そんな中で、アメリカの例ではあるが、動物園の存在意義はなにか? その時代推移はどうなっているのか? など、ひとつの答えが書かれており、本書を読むことが実にエキサイティングな体験であった。
特に、施設が本質的に担うべき教育普及機能に対する取り組みの変化、深化については、現在自分が抱えている課題でもあり、身につまされつつ新たな活力を得た感がある。

そこに書かれた内容は、作者も折りにつけ書いているとおり、アメリカ大国主義的な傲慢さもあり、もろ手を上げて、賛成し感銘を受けるというようなものではない。であるが故に、批判的な感情なども含みつつ、失敗例や成功例を常に自分で咀嚼し、思考しながら読んだため、かなり時間がかかってしまったが、その文、非常に濃密な体験となったと思う。

今後、動物園に行ったときの自分のものみかたや捉え方は、確実にこれまでと違っているだろう。

動物園にできること Book 動物園にできること

著者:川端 裕人
販売元:文藝春秋
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2006年3月20日 (月)

たぬきつ!

超期待はずれ!

いろいろと云いたい事はあるが、まず! 話がどうのという前に、無意味なルビふりがとにかく読みづらい。本来の「読み」とは違うルビをふる。というセンスは、四半世紀前に流行った手法なのだが、「今、それがかえって新鮮」なんつーことには勿論ならず、ただひたすら読みにくいだけなのだ。
「会社勤めのおねーさん」に「キャリアウーマン」と、ルビをふる意味はあるのか?
「合議制を維持して運営して」に「よりあつまってうごかして」と、ルビをふる必要は果たしてあるのか!?
そんなルビふりになんの効果があるというのだろう。小賢しいし五月蝿い。事程左様に全編がそんな感じで、とにかくリーダビリティを削ぐこと殺ぐこと夥しく、正直腹が立ちました。

てな感じで、ストーリーに集中できなかったせいもあったのだろうか、話自体のアラにも気づきまくりなのだ。とんでもない状況をあっさり受け入れる叔父さん。とか、非常識な教師の無駄な決め付けとか、話を強引に進めるためのご都合主義な展開にはげんなりする。

重要な設定を説明科白で進めてしまう安直さも鼻につく。むしろ地の文で説明してしまったほうがなんぼかマシなのでは。

主人公が狸に狐だから牧歌的ってことなのかもしれないが、言い換えれば底が浅いだけ。ステレオタイプで、新鮮な驚きはなにひとつなかった。

一応フォローしておくと、文体とかストーリー構成とかは、自分は是とするそれとは真逆に違っていたということなので、こういうタイプのお話が好きな人には楽しめるのかもしれません。

たぬきつ!(1) Book たぬきつ!(1)

著者:秋津 透
販売元:エンターブレイン
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2006年3月19日 (日)

さよなら絶望先生(3)

久米田は相変わらず世の中に毒づいておるなぁ。はたでみている限りは面白いけどね。

第3巻はちょっとネタ的に弱かったかしら? キモイだめし、間違いさがし、心の闇鍋。。。 あ、けっこう面白かったか。自分的には下見ネタに激しく同意するぞ。それを認めること自体がイタイが、な。

さよなら絶望先生 3 (3) Book さよなら絶望先生 3 (3)

著者:久米田 康治
販売元:講談社
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2006年3月18日 (土)

アンパンマンの世界 やなせたかし作品集

アンパンマンって嫌いだったんですよ。なんか幼稚で子供騙しだと思っていたので。

ああ、すみませんでした。誤解していました。食わず嫌いでした。アンパンマンミュージアムに行って、アクリル画に描かれた彼らのたたずまいは実にヒーローでありました。誰がどう思おうと正義のため平和のために身を呈して闘う姿。ああ、なんと崇高であったことか。

というのは少々大げさではあるが、絵本のキャラとしてではなく、絵のモチーフとしてのアンパンマンにグッときてしまったのですね。というわけで購入した画集。よかったっす。ミュージアムに展示してあった絵がすべて納められているわけではなく、しかも一番グッときた2枚が掲載されていないのはガッカリだが、いずれ第2集が出ることを首を長くして待つこととしよう。でもってミュージアムには再訪したいなぁ。

Book アンパンマンの世界―やなせたかし作品集

著者:やなせ たかし
販売元:フレーベル館
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2006年3月16日 (木)

大魔法峠

ほんの出来心で試し買いしてみましたが。。。。。

無理して萌絵にチャレンジしているのがイタイタシイです。それ以前に、作者は絵柄方向にチャレンジしている人なので、自分との関係性においては親和性が微弱ですね(政治的に正しいっぽい表現にしてみましたよ)。

まあ、オチが全部サブミッションってのはちょっと面白かったけどねぇ。。。。。

大魔法峠―マジカル血煙コミック Book 大魔法峠―マジカル血煙コミック

著者:大和田 秀樹
販売元:角川書店
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女湯のできごと

女湯は、男にとって未知の空間なのである。普段は気にもしないような場所ではあるが、云われてみれば確かに気になる空間なのである。

別に一糸まとわぬ(でもないか)姿の女性の園、という下世話な視点ばかりではなく、純粋に「知らない」ことに対する興味である。たぶん、男湯と大差ないのだろうが、女ばかりのその場所でのあれこれってやはりなにか自分の知らないナニカあるような気がするわけだ。自分の経験から云えば混浴したときと男オンリーの風呂とは、やはりなんか違うような感触があるわけですよ。異性の視線がないからこそのナニカ。そういう差があるやなしやの好奇心なのである。
(ちなみに自分は混浴は得意じゃあない。目のやり場とか、なんやかや気をつかってしまって逆に気疲れしてしまうからね)

で。本書だが、結論からいえば、そういう己の探究心を満たすような本ではなかったなぁ。女湯リアルレポートというよりは、銭湯生活にまつわる日常エッセイで、それはそれで十分気軽に面白かったのだが、積年の疑問はいまだ晴れることはなかった、と。まあそんな大仰な話でもないか。というよりも、おそらくは自分が想像するようなナニカなんか本当は「ない」ってことなんだろう。

女湯のできごと Book 女湯のできごと

著者:益田 ミリ
販売元:光文社
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2006年3月14日 (火)

だめあね☆ へいらっしゃいませ、ご主人様!

バカだ! 大バカ小説だっ! いやもちろん誉め言葉ですよ? ってなんで疑問形かよ!?

てな感じのツッコミで書きはじめてみたが、どうですか? どうですかじゃねえか。

いやぁ、けっこう面白かったわ、これ。冒頭の思いきりなライトノベル的スタートっぷりにゲンナリしたのは紛れもない事実だが、寿司屋開店あたりからの暴走するハイテンション天然ボケっぷりの姉と上田(@くりいむしちゅう)ばりの理屈っぽいツッコミ芸の弟が繰り広げる果てしないスラップスティックサクセスストーリー(笑)についひきこまれてしまったですよ? 萌え萌えですよ? メイド満載で温泉サイコーな展開から繰り広げる適度なお色気光線にココロの股間がもきもきですよ? わきわきサイコーですよ? ああ、こんなバカっぽい感想でいいのでしょうか?

てな感じで、毒にも薬にもならないノーテンキなバカ小説もいいものであるなぁ、という感慨に浸るのであった。とさ。

本編にカンケーないが、あとがきにあった某戦隊ヒーローの桃色扇風機なお姉さん萌えな作者の気持ちには、激しく共感/叫喚するとです。

だめあね☆ へいらっしゃいませ、ご主人様! Book だめあね☆ へいらっしゃいませ、ご主人様!

著者:葛西 伸哉
販売元:エンターブレイン
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都立水商!

単行本が出たときに非常に気にはなっていたのだが、逡巡しているうちにマンガ化して今度はドラマ化。直感を信じられなかった自分が許せないな。ちくしょ、すんごい面白かった! 全編を通じて感じるのはストレスフリーな物語であるということ。自意識過剰な物語ばかりな昨今(とゆーか自分が読む話はそんなんばっかってことだが)、屈託していない物語は実に潔い。清々しい。

とにかくフーゾク専門高校という強烈な飛び道具的設定(ネタ)が実にキャッチーなのだった。そしてそんな一歩間違えると単なるエロマンガ的なネタになってしまうところを、心地よい学園青春小説にしあげてくる腕に拍手する。作者は生々しいエロネタに陥らないための作話の仕掛けには、すごく気を配っているように感じた。
例えば、クロニクル的回想で物語を進めることによって、登場人物の具体的なエロ行為の表現を必要としないエピソードを重ねてくるところや、さすがにそれはヤバイっしょというような常識的モラルからの逸脱で読者をドン引きさせないよう、小田真理というキャラクターを配置して安全弁としているところなど、語り口に非常に気を使っている。また「セックス」というリアルな単語自体も、生徒とは無縁の、しかも最後のほうになってはじめて登場させている。

青少年の乱れた性をオッサンくさい目線で描くような真似はしていないのである。あくまでもこの物語が艶笑譚であり寓話であるというスタンスを崩さない。見事である。そんな特異な高校の10年の断片記録ではるが、それでもキャラのたてかたがしっかりしているので、ラストの全員揃っての大団円はかなりホロリとさせられるのであった。

さて。ところが、野球部に関しては他のエピソードに比べると非常にページを割いている。つまり異常な設定でも、部員達の行動は(陳腐な表現でスマンが)普通に素敵な青春群像劇であり、そこに描かれるのは、設定の(いい意味での)おバカっぷりとは裏腹に、至極直球に凄いヤツラの物語になっている。話はちょっとずれるが、高校野球の胡散臭さは自分も常日頃感じていることで、高野連の老害的愚劣さを一刀両断する様は実に心地よい。正直、ちょっと泣けたよ。

そんな設定の勝利な物語ではあるが、しかしこれは活字であるがためのフィルターというものは確かにあるのではないか、とも思う。マンガやドラマにした場合、そんなオブラートがない分、生々しさが先行してしまわないのだろうか、とは気になるところではある。ビジュアル化されると自ずと生々しさというか、即物的なエロが前面に出てしまって、せっかくの話の面白さとは別のテイストになってしまうような気がするのだか。実際、マンガに関してはちょっとだけ読んでみたのだがその傾向を感じてしまったので、なんか違うな、と。

ともあれ、お買い得の1冊だとは思う。

都立水商 Book 都立水商

著者:室積 光
販売元:小学館
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2006年3月12日 (日)

春は出会いの季節です

別に批難しているのではないのだけれど。。。 ここまでオリジナリティがないとむしろ清々しいッスネ。とか? 人型兵器操縦兵の女学校という、古くは「トップをねらえ!」(ディープにはまった)から始まり最近では「ガンパレード」(ゲームもアニメも未見)という専攻作品があるわけだがそれに対し、新たなアイディアがあるわけではなく、ただひたすらストレートに彼女達の日常生活を活写する。そんなお話である。実際、タイトルが「トップをねらえ!3 ノベライゼーション」となっていてもなんら違和感がないのである。(実は「マリみて SF編」でもいいかも。。。 ってそりゃさすがに違うか!?)

しかし、そんなツッコミはどうでもいいことのように思えるほど、読んでいて面白かったのは、作者の文章巧者っぷりのせいだろう。熱を失わない程度に抑制の効いた文体やテクニカルタームの引用のしかた、本当に上手いと思う。全体構成のバランスも(少々ブレはあるが)キレイ。冒頭に残酷な現実をつきつけてきておいて、本編は元気な学園生活という設計も効いている(ナイーブな自分には効きすぎかも?)。
扇智史は語り口の作家なのかもしれない。

というわけで、上述ではいかにもけなしているかのような表現をしているが、実のところそんなに嫌ってはいない。パクリだとかパスティーシュだとかオマージュだとか、まあ表現方法はどれでもいいんだけれど、そういうタイプの話が認容できるのであれば、まあ楽しめると思う。

(実は自分はあまりそういうタイプの作品は得意ではないのだけれど。やはり語り口に呑まれちゃったのかなぁ)

春は出会いの季節です アルテミス・スコードロン Book 春は出会いの季節です アルテミス・スコードロン

著者:扇 智史
販売元:エンターブレイン
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ウルフ・タワー

表紙買いの1冊(ちゅーか4冊だが)である。久しぶりに読んだタニスリーではあったが、文明崩壊後のファンタジー世界であるとか、母子をはじめとする近親間の葛藤相克であるとか、まさにタニスリーっぽい内容で、三つ子の魂百までだなぁ、と思った。
結局のところ、愛する者を見い出すことによるダメな母親からの脱却という話なのだが、思わせぶりなわりにはさほどに深刻な内容ではなく、つまりはジュブナイルというジャンルを逸脱しないように抑えているんだろうなと思った。全体的には悪くはないのだが、話が転がりだすのが第2部以降で1冊目は若干つらいかとは思う。ちなみに一番好きな話は第2部の迷宮編。ただアイディア的にこれで1冊書ききるとは思わなかったなぁ。

つらいといえば、訳の文体で、なんかヘンにギャルっぽいチャカついた訳しかたをしているのがすごい鼻についた。ま、主人公の年齢設定や性格設定、そして日記形式の小説ということがあっての方法論なのだろうが、自分としては失敗してるんじゃないのかな、と思った。もっとさらっと普通な感じでよかったのではないかと思うが、まあ、人によっては親しみが持てると感じるのかもしれないし、むずかしいところではある。

ウルフ・タワーの掟―ウルフ・タワー〈第1話〉 Book ウルフ・タワーの掟―ウルフ・タワー〈第1話〉

著者:タニス リー
販売元:産業編集センター
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ライズ 星の継ぎ人たち―ウルフ・タワー〈第2話〉 Book ライズ 星の継ぎ人たち―ウルフ・タワー〈第2話〉

著者:タニス リー
販売元:産業編集センター
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二人のクライディス―ウルフ・タワー〈第3話〉 Book 二人のクライディス―ウルフ・タワー〈第3話〉

著者:タニス リー
販売元:産業編集センター
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翼を広げたプリンセス―ウルフ・タワー〈最終話〉 Book 翼を広げたプリンセス―ウルフ・タワー〈最終話〉

著者:タニス リー
販売元:産業編集センター
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2006年3月11日 (土)

高知遺産

一見、高知の「まち」を切り取った写真集である。路地や廃墟といった昭和(レトロ)な風景をまとめた本であるが、そこには連綿と積み重ねてきた高知のアイデンティティの喪失に対する警鐘がある。

自分も郷愁志向な部分があるので、なんでもかんでも再整備という発想は嫌いではあるが、逆にやみくもに昔礼賛というのもどうかと思う気持ちもある。ゆっくりと自然に変化していくのがいいやなぁ。

それにしても、地方出版社のご当地本って掘り出しものが多いので、旅に出ると本屋が欠かせないっす。

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2006年3月 8日 (水)

注意! 感想文中、ネタバレに結びつく可能性ある言及をしています

見事な警察小説である。ある種典型的な設定ではあるが人物の造形描写が上手く説得力がある。その造形力は主要人物だけに限らず端役にまで目くばりが届いているのだ。また本格推理として手がかりを手際よく配置し、無駄のない推理小説として仕上げている。リーダビリティがあるのだ。萩原浩は「オロロ畑」で知った作家ではあるが、このようにジャンルの守備範囲が異様に幅広い「プロ」な作家になるとは思ってもみなかった。

ラスト1行のインパクトについては、まあ想定の範囲内ではあったので、衝撃とまではいかなかったが、しかし主人公の二人の刑事が醸し出すカタルシスのあとに、哀しみとも恐ろしさともつかない現実を突きつけられた気がしてなんともやるせないところではある。

個人的に、ラストの1行が、
「・・・という噂をきいたんだけど」「長げえよ」
なんちゅう、それまで積み上げてきたお話を台無しにする飛び道具だったら、心底ビックリしたけどねぇ。んなこたぁないか。(笑)

ともあれ、お買い得な1冊である。読むべし、だ。

噂 Book

著者:荻原 浩
販売元:新潮社
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2006年3月 7日 (火)

春になったら苺を摘みに

英国の老婦人、そして彼女を取り巻く様々な人々の交流。一片のショートストーリーを読んでいるようでもある。それは落ち着いた筆遣い、語り口の見事さでもあろう。やはり上手い作家だなと思う。

ただ、個人的に面白かったかというと、実は首を傾げてしまうのであった。上手さイコール面白さではないんだなぁ、とつくづく思った。多分、彼らの生活や価値観についていまひとつ興味がわかないというのがその原因だと思う。面白がるスイッチというものは、いつも「ON」ではないし、いつも同じ条件で「ON」するわけでもない。読んだ時や場所が違っていればまた感じ方も変わっていたんだろうな、とは思う。

好きな作家なだけに、今回の出会いの間の悪さにちょっと後悔している。

春になったら苺を摘みに Book 春になったら苺を摘みに

著者:梨木 香歩
販売元:新潮社
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2006年3月 6日 (月)

おせっかい

注意! 文中、ネタバレに関係する記載があるかもしれません。

ミステリーのようでミステリーではなく、SFのようでSFじゃない。なんとも隔靴掻痒な感じの話であった。ミステリー小説の中に入り込むことのできる状況という奇想は面白かったし、それと現実との交錯していく展開は、まあ嫌いではない。
ただ、ミステリーとしてのクライマックスやカタルシス、SFとしてのセンスオブワンダーはあまり感じられず、結局なにがオチだったのかが、よくわからないまま終わってしまった。という宙ぶらりんな状態を意図しての小説だったとしたらしてやられたといったところだろうか。

文中に登場する推理小説の設定がやけに陳腐で、それはあきらかに意図的になされていると思うのだが、だからこそ、(文中の)現実世界が実は、というようなメタフィクション系のどんでん返しを期待していた分、すかされたのがちょっと引っかかっているのかもしれない。

おせっかい Book おせっかい

著者:松尾 由美
販売元:新潮社
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学校の階段

学校の階段を上り下りする競技のための未公認部活「階段部」の一応、スポコン系青春小説になるのだろうか。アイディアは悪くはない。新競技のレギュレーションも(若干の自家中毒は起こしつつも)面白くできている。文章も若書きのせいだろうか、ギクシャクしているところもあるが、まあそれも目をつぶろう。というわけで、おおざっぱな感想としては、まあ楽しめた。というところだろうか。

ここからは難癖。
まず、学校内を走り回ることに対する禁忌感が強く打ち出されているけれど、現代高校生において「?」な感じは否めない。純朴すぎるんじゃあないですか? おそらくこの設定で話を展開しようとするならば、中学生にしないとバランスが悪いのではなかろうか。

もうひとつ。主人公の家庭状況で、4姉妹を設定する必然性がまったく見えない。萌え要員のようで全然活躍しないし、むしろそんな設定をいれずに部活に集中した話のほうがよかったんじゃなかろうか。

あと、全体として、筋肉部だとか保育部だとか、せっかくわけのわからないサークルの群雄割拠する学校という設定と、統制主義の生徒会執行部というあからさまに「究極超人R的」な構成をとったのだったら、いっそのことオバカな学園ライフをもと前面に押し出してほしかったかな。

まあ、一発ネタとしてのライトノベルとしては面白かったです。

学校の階段 Book 学校の階段

著者:櫂末 高彰
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2006年3月 1日 (水)

Ares(1)

砂漠の移民星のSFアクション。少女型戦闘アンドロイドとのバディストーリー。すべてどこかでみた事のある設定と物語。テイストとしては、悪いとは思わないけれど、なんかこう無条件に「いいっ!」と思える吸引力には欠けるか。

絵的にも悪いとはいわないけれど、中年のオヤジを描くのはあまり上手くないな。描線が細いってのが、話の雰囲気にはあっていないのかもしれない。少なくとも自分には今ひとつかな。

今後の展開次第ですね。

それにしても今日び、カラーが手塗りってのは逆に新鮮でした。

Ares 1 Book Ares 1

著者:瀬都 ナルミ
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多重人格探偵サイコ(11)

田島昭宇の描く硬質で冷徹な絵柄がさえる多重人格探偵第11巻。ここ数巻、話が拡散しすぎて訳分からん感じがあったが、あらためて序章を振り返ることではじめて読んだ時の、エロスとタナトスのリビドーを思い出すことができましたよ。やっぱなんだかんだいって面白い。不健全この上ないといえばまったくそのとおりなのだけれど、そういうダークサイドを追ってしまう心は、誰にでもあるわけで(特に自分は強いとも思うわけで)、だから買い続けるのだと思う。

(でも、いいかげんクライマックスに近づいてもらってもいいんだけどねぇ)

多重人格探偵サイコ (11) Book 多重人格探偵サイコ (11)

著者:田島 昭宇,大塚 英志
販売元:角川書店
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