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2006年2月23日 (木)

わくらば日記

いまさら説明しても皆知っているとは思いますが、ノスタルジックな微超自然物語でした。一応ミステリー的な味付けがなされているが、基本的にはあの昭和の時代の市井の人々の(のが多いな)人生をやさしい目線で描いている。しかし、やさしいが故に哀しい。そういう物語であった。ややもすればお涙頂戴的になりがちではあるが、程よく抑制が効いているせいか読後感は重くない。連作長編という形式なのであまり深く掘り下げない構成のせいかもしれない。それで正解だったんじゃないかろうかと思う。

大作傑作ではないとは思うが、話題になるのも判る。読んでよかった。味わい深い作品であった。

魅力的な話なので続きが読みたいという気持ちもあるのだけれど(このあとに待ち受けている哀しみがわかっているだけに)この1冊で完結として、これからの物語はこの本の余韻で銘々が想像するだけでもいいのではないか。と思うところもある。読者なんて勝手だね(というか自分が、か)。

ところで、よくよく考えると、語り手である和歌子の年齢だが、還暦過ぎくらいだよね? 文章上ではえらい老婆(80歳くらい?)のようなイメージだけど、今時のお年寄りってもっと今っぽくて、あつかましいくらいに元気な印象があるんだけどね。

わくらば日記 Book わくらば日記

著者:朱川 湊人
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