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2006年1月22日 (日)

僕らの国

注意! 感想文中、ネタバレに結びつく可能性ある言及をしています

近未来シミュレーション小説でサバイバル小説のわけだが、ストーリーを進めるために生命を軽視するというのはちょっと首をかしげるところだ。必然ある殺し合いはまだ許すとして、無意味に殺される生命、露悪的なカニバリズムまで描く必要なのか。
話の展開にも微妙に狡さを感じる。前半のシミュレーションからすれば各棟の確執と崩壊というようになるのだろうが、それを担うべき登場人物がサクッと死んでいってしまうのだ。肝心の錬王の最期にして、実にあっけない。というか、強引に話の流れを捻じ曲げてしまってるように思える。パターンはずしのつもりかもしれないが、フリを回収できなくなって無理矢理、魔獣に整理させた。書くのを逃げたというように見える。殺伐としたジェノサイドストーリーに持ち込む必然性はないし、第一、魔獣の設定自体、不要なのだ。それがなくても十分、クライマックスに持ち込むことができるはずなのに。
クライマックスのミステリーの解明は意外にも伏線もある本格的な展開で上手いなとも思ったし、ラストもキレイにまとまって、読後感は悪くない。リーダビリティもあってどんどん読み進むことができる。正直、面白いのだ。それだけに実に惜しい。

「バトル・ロワイアル」以降、過剰なリアリズム(?)を売りにする話が増えているが、自分としてはそういう話が嫌いではないし否定する気もないが、多すぎるってはさすがにちょっと、ね。

僕らの国 Book 僕らの国

著者:佐神 良
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