2008年4月19日 (土)

南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで-特殊用途愛玩人形の戦後史

ラブドールにはかなり前より興味があったのだが、やはりアダルトグッズとして位置づけられており、なかなかに観たり触れたりする機会はないわけだ。第一、情報もないし(もっとも最近はネットでそれなりに知り得るが玉石混合の情報を取捨選択していくのはけっこう面倒だし)、己の探究心を満足させることがなかなかにできていなかったのである。

あ、とりあえず見苦しい言い訳をしておくが別に欲しいとかいうわけではなく、純粋に(いろんな意味で)どんなもんかなぁ、という興味である。

これまでも雑誌やTVなどで、たまに取り上げられることもあったが、それは人形そのものというよりは、そのコレクター(の奇行)に視点があたっていることがほとんどで、それはそれで面白いのだけれど、結局オタクバッシング的文脈であり、それはちょっと違うだろ、と思っていたわけだ。

というわけで、本作は、より人形そのものに対して焦点を絞り込んでおり、ダッチワイフ史の概括や、製作工房のインタビューなど、かなり自分の知的痴的好奇心を満足させてくれた。
ただ、全体的に表層を網羅した分、さらっと流れてしまっている感じもあり、できるならもう少し深いところまでつっこんだ(いや、そういう意味じゃなくて)内容だとより興奮できたのだけれどなぁ、とも思う。
もし続編リポートがあるのなら、現象面だけではなくサイエンス面も補強してもらえると非常にうれしいところである。

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南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで-特殊用途愛玩人形の戦後史 Book 南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで-特殊用途愛玩人形の戦後史

著者:高月 靖
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2007年6月15日 (金)

戦国時代のハラノムシ

昔の人の考えることは面白いねぇ。という感じで愉しむ絵解き本で、テイストとしては怪獣図鑑とか妖怪大辞典とか、まあそんなもん。意図的にそういう構成にしているのだろうな、とも思う。

この手の本は、個人的には原典自身にあたるべしという信条/心情なので、こういう再構成版よりは復刻本として発刊してほしいかな、と思うところもある。しかし、とりあえず初心者向けとして簡潔にまとまっているので、これはこれでよかったな。

読んでいて「蟲師」に対する言及が多く、確かにそのとおりだとは思うが、あまりにも云いすぎると、若干の気恥ずかしさを感じないではないシャイな自分(笑)。

九州博物館に行ったとき、ハラノムシシリーズをまったく気にもとめていなかった。というか、気づいちゃいなかった自分に対しては、ちょっとダメじゃん、と反省するところしきりではある。今度行ったときはきちんとチェック&ラーニングですね。ただしいつ行けるのかはわからないけれど。

それにしても、自分、きっと陰虫に寄生されているに違いないっす。

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戦国時代のハラノムシ―「針聞書」のゆかいな病魔たち Book 戦国時代のハラノムシ―「針聞書」のゆかいな病魔たち

販売元:国書刊行会
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2007年6月12日 (火)

ピクトさんの本

対象と手法については「オジギビト」にかなり近しいが、「ピクトさん」という名称(と人格)を与え、その仮想人格の人となりを基点に分類整理していく、という点が、伝記的でもあり、とある一族家系の生き様的でもあり、面白い点であった。

とりあえず、収集と分類まで、が本書において行われていることだが、今後、より学究的発展をしていくとすると、どういう方向に進んでいくのだろうか。ピクトさんを単なるピクトグラムの一形態としてまとめると、白けてしまうし、キャラクター化を過度にすすめると単なるパロディになってしまうし、けっこう難しいように思う。

ともあれ、初発としては世界各国のピクトさんを知ることができたことで十分だとは思う。

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ピクトさんの本 Book ピクトさんの本

著者:内海 慶一
販売元:ビー・エヌ・エヌ新社
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2007年1月 8日 (月)

評伝シャア・アズナブル <赤い彗星>の軌跡(上・下)

ヲタク系サブカルチャー分析本というジャンルは、商業ベースから同人ベースに至るまで玉石混合の状況の中、様々な露出がされている。特にその中でもキャラクター分析・評価というアプローチはファン気質を非常にくすぐるテーマであるためか、これまで数多く行なわれている。

さて、本書である。この本の素晴らしいところは、フィクションではなくあくまでも史実であるという一貫した視点で記されている点であり、故にファンブックではなく評伝足りえているということである。手法としても、評伝としての体裁を貫き通し、これまで多く既出した心理分析や名言集にはならないように気をつけているように思う。つまりは人物評としての伝記であることを固持できているのである。この架空を事実として捉える、捉えるだけではなく架空であることを否定する方法論により、本書は嘘学として成立しているのである。

面白いのは、ガンダムがTV版、映画版という微妙に内容の異なるいくつものバージョンが存在することを異説として表現していることである。現実世界においても時間の経過とともにいくつもの説が存在することはようある話なのだ。だからこそ、本書において異説が存在することで、逆にここに書かれている歴史があたかも史実であるかのような雰囲気を作り出しているのだ。これが例えばTV版だけを、あるいは映画版だけを原典とし、他を切り捨ててしまったらここまで歴史としてのリアリティはでなかったかもしれない。

自分はファーストガンダムについてはかなりはまった方だが、ゼータ以降はいまひとつ面白いとは思えずほとんど観ていない。だから、本書において、逆襲のシャアまでの概括ができたことについては感謝したい。
実のところ、本書後半(ゼータ中盤以降といってもいい)は、論旨構成が若干乱れてしまっているところはある。シャアという人物評が上手くころがっていないように感じた。あるいはこれは原典自体の混乱のせいで、まとめづらかったせいかもしれないが、もう少し整理してほしかったとは思う。
(もっともこれは、自分がゼータ以降、観ていない故の共感がないせいから、という見かたもあるのだな。しかし見なくなった理由が話として変に複雑化混乱化して面白くなくなったせいでもあろうし、表裏一体なのかもしれぬな。少なくとも、いまあらためて見直すべきときが来たと思いたい)※池田秀一の声で読んでください(笑)

評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 上巻 Book 評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 上巻

著者:皆川 ゆか
販売元:講談社
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評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 下巻 Book 評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 下巻

著者:皆川 ゆか
販売元:講談社
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2006年11月 8日 (水)

官能小説用語表現辞典

官能用語の集大成といっても過言ではない(?)。エロ単語の比喩表現について、よくぞここまで想像を広げることができるものだ、と半ば呆れつつ感心するのである。

実のところ、辞典としてはツメの甘さもあって、用例集だけで終わっているのが残念といえば残念なのだ。が、しかし、じゃあどうすればいいのさ、と云われるとなかなか思いつかないのも事実。それぞれの単語の説明をされてもなぁ、てなもんである。実際、エロ単語なんて「出オチ」みたいなもんで、説明すればするほど蛇足で冗長かもしれんし。

それにしても。男子だったら誰でも経験があると思うが、中学時代、国語辞典で「淫乱」とか「手淫」とか、そういう単語を引いては一人興奮したもんですよね。そんなときにこの辞典があったら、そりゃもう何杯でもドンブリ飯いけたか判らんですよ。今じゃピクリともしないがね。下品ですみませんずり。

ともあれ一家に一冊。マジで(笑)。

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2006年6月 1日 (木)

幻獣標本採集誌

前作同様の幻獣のミイラ標本図録集。竜や龍、悪魔などの伝説神話からの引用生命体や、ダジャレ系UMAは前回同様だか、バリエーションが多くなっている。また、今回は聖教からの引用「7つの大罪」の設定が面白かった。とにかくよく出来ているのだけれど、カニなどの外骨格系ミイラはちょっとつくりものっぽいかもしれないなぁ。いや、実際に生きていた生物のミイラなんでしょうけれど(笑)。

実物を見てみたいなぁ。

幻獣標本採集誌 Book 幻獣標本採集誌

著者:江本 創
販売元:パロル舎
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2006年3月26日 (日)

ろくろ首の首はなぜ伸びるのか 遊ぶ生物学への招待

作者自身「鼻行類」にインスパイアされていると書いているとおり、正統派の嘘学本。妖怪が生物として成立するための考察のあれこれについては、実際ワクワクさせられた。
本来ありえない事象が成立するための思考実験は、まさに「空想科学する者」としての基本的な心構えであろう。現代科学では成り立たないことを笑いにするため重箱の隅をつつくようなあらさがしをする某空想科学解説書の志の低さに比べ、数段「科学の楽しさ」を理解し表現しているといってよいだろう。

といいつつ、(作者があとがきでエクスキューズもしているが)完全な嘘に徹しきれなかった部分はちょっと勿体なかったかもしれない。また、それぞれの章でもワンアイディアを提示するにとどまっており、そこからさらに深い考察にまでふみこみきれていないところについては正直残念なのだが、とりあえず数で勝負といったところなのかもしれない。

生物学をかじったことのある人はもちろん、そうではない人にもお薦めしたい。

ところで、一生物嘘学者としては、鵺は、交合状態のまま癒着してしまったアンコウのような雌雄共生体だと仮説したい。また目々連は障子環境に寄生するガラス体植物であると仮設したい。しかしそれはまた別の機会に論証してみることとしよう。

ろくろ首の首はなぜ伸びるのか 遊ぶ生物学への招待 Book ろくろ首の首はなぜ伸びるのか 遊ぶ生物学への招待

著者:武村 政春
販売元:新潮社
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2006年3月23日 (木)

通勤電車で座る技術!

瑣末なテーマを仰々しく論じるタイプのハウツー本。書かれている内容は、誰でも車中では考え、あるいは実践している事柄ではあるが、あらためてまとまった形で提示されると、「あるある」的視点と「目鱗」的視点が相まってけっこう楽しめる。

肩のこらないお手軽な本なので文体もお気軽だが、たまに挿入される数式や図示がそこはかとない学問っぽさを匂わせていて、個人的にはそっちの路線で(電車だけに!)まとめてほしかったかな、とは思う。

それにしても、流星課長はいつみてもカッコイイなぁ。

通勤電車で座る技術! Book 通勤電車で座る技術!

著者:万 大
販売元:かんき出版
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鼻ほじり論序説

鼻をほじることに対する、歴史から技術など様々な視点から考察した研究書。

くだらないことを大上段に構えて論旨を展開する部分、研究書の姿勢を崩さない構成など、まさに嘘学。ただし、せっかく前半部分で、(固有名詞などで「ああ、これはウソなんだな」と判る程度で)いかにも格調高い論文然としているにもかかわらず、中盤以降、書くべき内容(つくべきウソか?)がなくなってしまったのかどうか判らないが、星座占いやテーマソングなど内容的に急激に失速してしまっているのが非常に残念ではある。

ところで、惹句に「セックスよりも愉しく、しかもリスクなし!」とあるが、さすがにそれは賛成しかねるなぁ、いろんな意味において。

鼻ほじり論序説 Book 鼻ほじり論序説

著者:ローランド・フリケット
販売元:バジリコ
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2006年2月16日 (木)

イグ・ノーベル賞

あくまもでも実学であって嘘学ではないのだが、誰も思いつかないような(思いついても普通はテーマになんかしない)仮説に対する論理的なアプローチという部分がシンパシーを感じずにはいられない。

科学する心の本質とは、興味を持ったことに対する探究心であって、何かの役に立つために研究するというものではない。つまり「面白いと思う気持ち」が大事ってことなのだ。だから、その命題がどんなにおちゃらけてたとしても、仮説・実験・検証という論理的なアプローチを行い、結論を出しているのであれば、それは優れた研究であるといってよいのだ。

イグノーベル賞は、一般的にはバカバカしい研究に対してのツッコミであるように思われているようだがそれはまったくの間違いで、純粋な科学する心に対する称賛であり、遊び心なのだ。おそらく誤解されるひとつとして、疑似科学や世界に対する明らかな過ちに対する茶化しが混ざっているために、全部がパロディであるととられてしまっているのかもしれないが、それは表層的なみかたであろう。
(後者も単なるお笑いが目的ではなく、笑うことで客観視し、バカを浮き彫りにするということなのだが)

そんなわけで、読み応えのある科学書籍となっているわけだが、ただ受賞の対象となった論文内容などは比較的さらっと書き流されていたりして、少々悲しかった。やはり論文自体も読んでみたいと思ってしまうので、抄録くらいはしてほしかったかな。

イグ・ノーベル賞 大真面目で奇妙キテレツな研究に拍手! Book イグ・ノーベル賞 大真面目で奇妙キテレツな研究に拍手!

著者:マーク・エイブラハムズ
販売元:阪急コミュニケーションズ
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もっと!イグ・ノーベル賞 Book もっと!イグ・ノーベル賞

著者:マーク・エイブラハムズ
販売元:ランダムハウス講談社
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